自己組織的チーム実現へのリーダーの役割

 アジャイルの原則(1)の1つに「最良の構想、要求事項、設計は、自己組織的チームから出てくる」がある。自己組織的チームとは、どのようなチームで、どのようしてできるのであろうか。

 「三人寄れば文殊の知恵」という諺があるように、新しいアイデアを創造したり、難しい問題を解くような場合、一人で行うより複数メンバーで行うと文殊菩薩のようなすばらしい知恵が出てくる。異質な者同士が話し合い、意見交換することによって、新しい発見が生まれ、それらが結集されて、一人の人間では考えつかないようなすばらしい知恵が生み出されるのである。しかし複数の異質の者がただ集まりさえすれば、すばらしい知恵が生み出されるのであろうか。単に人が集まるだけでは否である。異質な者同士が、問題意識や目的を共有し、それぞれが影響し合って知恵を出し合い、ひとつの組織として意思決定を行うことができ、まとまって行動ができるようなチーム、すなわち自己組織的チーム(Self-Organizing Team)でなければ、すばらしい知恵は出てこない。

 自己組織的チームとは、権限委譲されたメンバーが、目的や価値観を共有し、お互い尊重し合い、相互依存関係を保ち、チームとして自律的に意思決定し、責任を持って行動できるチームである。このようなチームは、意思決定に関して外部からのコントロールを受けることなく自ら意思決定をし、行動できるので、要求や変化に素早く対応できる。自己組織的チームの特徴を以下にあげる。
 ・共通の目標を一緒に協力して達成する
 ・チーム全員が合意して意思決定する
 ・チームは結果をコミットする
 ・情報はオープンで共有化されている
 ・コンフリクトは効果的に解決される
 ・メンバーの役割は明確である
 ・メンバーは高いモチベーションを持っている
 ・チームは変更に対して柔軟である
 ・行動の振り返りにより継続改善がなされる
 ・お互いが助け合う
 ・お互いが学び合う

 チームを自己組織的チームに成長させるには、どのようにしたらよいであろうか。タックマンのチーム発展段階モデル(2)(3)によると、チーム形成には成立期、動乱期、安定期、遂行期の4つの発展段階がある。
 成立期では、メンバーが招集、紹介され、チームの目的や行動規範、何故一緒に作業するかなどが説明される。この段階の行動は、リーダーに依存することが多く、メンバーの振る舞いはまだよそよそしく、個々に行動する。リーダーは、チームメンバーが、チームの目的、行動規範などを理解できるよう支援し、明るく楽しい奮起作りをする。
 動乱期では、チームメンバーの行動は、まだ協力的でなく、異なる考えや観点で心を開いて対応できず、コンフリクトが起こったりする。リーダーは、コンフリクトの出現を注意深く見守り、チームが創造性を発揮してコンフリクトを共同に解決していくよう手助けする。
 安定期では、チームメンバーが一緒に作業を始め、チームのために自らの考えや行動を調整し始め、お互い信頼し始める。チームとしての成果が上がり始める。リーダーは、チーム状況やパフォーマンスを評価し、チームメンバーへのフィードバックを行い、チームメンバーの育成をはかる。
 遂行期では、お互いの信頼関係が強化され、チームはひとつの組織として運営されるようになり、チームとして協調して仕事ができるようになる。この段階では、お互いが相互依存関係を保ち、課題を円滑かつ効果的に自律的に対処でき、チームは継続的にプロセス改善をはかり、非常に高いパフォーマンスを上げるチームとなる。リーダーは、チームが自律的に目標を達成し、チームメンバーが成長するよう支援する。この遂行期のチームが自己組織的チームである。

 リーダーは、チームを自己組織的チームに導くため、指示管理的なリーダーシップではなく、チームメンバーの成長を第一に考え、チームメンバーのやる気を引き出し、チームメンバーが協力して、チーム自らが課題を円滑かつ効果的に対処できるよう支援するリーダーシップ、すなわちサーバント・リーダーシップ(4)を発揮することが重要となる。リーダーは、ファシリテーターとして、チーム自らが目的や目標を達成するよう、チーム状況を把握し、プロジェクトの進め方の助言、障害の除去、改善のためのフィードバックなどの支援を行うのである。

参考資料
(1)Principles behind the Agile Manifesto, http://agilemanifesto.org/principles.html
(2)タックマン・チーム形成モデル(Wiki),http://en.wikipedia.org/wiki/Forming-storming-norming-performing 
(3)Facilitating with ease!,Ingrid Bens,Jossy-Bass
(4)サーバント・リーダーシップ http://www.e-ainet.com/ServantLeadership.htm


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